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日本の農業のトリプルスタンダードと家庭菜園のすすめ 本当に安心安全な野菜が欲しかったら自分で作るのがいい

日本の農業のトリプルスタンダードと家庭菜園のすすめ 本当に安心安全な野菜が欲しかったら自分で作るのがいい

よく知られていることですが、日本の農家さんの大半は、自分の家族が食べる野菜と市場に出荷する野菜を別に作っていると言われています。そして、自分たち家族が食べる野菜には農薬はほとんど使わないけど、市場に出荷する野菜は見た目の綺麗さが大切なので農薬を使っている、ということも聞いたことはあるのではないでしょうか。私はこれを、日本の農業のダブルスタンダードだと思っています。

ですが、私自身がここ最近移住しつつある主人の実家のある滋賀県の中山間部の様子を見ていると、さらにここにもう1つのスタンダードがあると気づきました。つまり、日本の農業にはトリプルスタンダードがあるのです。

それが、農家でもなんでもないけど、ほぼ自給自足レベルで野菜やお米を作っている家庭菜園家たちの存在です。

この記事では、日本の農業を取り巻く状況や地方都市の常識をお伝えしつつ、「家庭菜園」が持つとても大きな可能性についてお伝えしたいなと思っています。

この記事の目次

「農家でもなんでもないけど、生まれてから一度もお米を買ったことなんてないよ」という人たちが地方にはたくさんいる

私は、両親が東北出身で東京育ち。30歳まで都会で生活していたのでまったく気づきませんでしたが、東京以外の地方都市では、農家でもなんでもないけど、おばあちゃんやお父さんが家庭菜園を本業の仕事(たいていはサラリーマン)の傍らやっていて、家では家庭菜園の野菜やお米をほぼ食べていた、という人がゴロゴロいます。

私が3.11のあとで岐阜市内に引っ越してきて、愛知県一宮市近郊で暮らしている20代の女性(3世代同居)から聞いた衝撃の言葉が、

「私の家は農家でもなんでもないけど、生まれてから一度もお米を買ったことなんてないよ」

というものでした。

彼女の家庭では、おばあちゃんとお父さんとお母さんが主に畑と田んぼをやっているらしいのですが、おばあちゃんは普通の年金生活者、お父さんは普通のサラリーマン、お母さんはパートの主婦で、プロの農家ではありません。ごく普通の家で、多分世間的にはよくあるサラリーマン家庭という位置づけになるでしょう。ですが、その裏でほぼ野菜やお米を自給していたのです。

思えば、東京時代も、千葉に住んでいる同僚や、東京23区以外の小平市とか八王子市に住んでいる同僚は、家庭菜園とかやっていました。ですが、東京のサラリーマンの場合は通勤時間がかなり長いので、畑を本業の傍らやるというのはかなり難しいので、ごく一部の好事家のやっていることでした。

ところが、地方にやってきて、例の20代の女性のように、お米や野菜をスーパーでほとんど買ったことがない、もしくは、じゃがいもやにんじん、玉ねぎやきゅうりなど、基本的な野菜に関しては自給しているという家庭がものすごく多いということに気づきました。

そして、当然ですがそれらのお野菜は、完全にオーガニックではないものの、ほぼ無農薬で育てており、自家採種で種を取っているところもとても多いということも分かりました。

日本におけるオーガニック農家の比率、わずか0.5%以下。さらに有機JASであっても農薬や化学肥料が一部認められているのも事実

オーガニック農家を応援しましょう!オーガニック野菜やお米を買いましょう!という言葉をよく聞きます。私も、応援の気持ちから、バイオダイナミック農園さんのお野菜を2年以上定期宅配で購入させていただいておりました。

ですが、オーガニック農家さんの数って、今の日本では全農家のうちわずか0.5%以下です。※この数値は調査によって多少前後します。0.3%以下と言われているところもあります。

どう考えても、今の日本では、オーガニック100%ですべての野菜を賄うことはできません。消費者側の経済的負担という側面からも、量的な側面からも、とても厳しい状況です。

さらにいうと、このわずかな有機JASの野菜であっても、一部農薬や化学肥料の使用が認められており、実際にはオーガニックではない場合もあるという問題も指摘されています。

では一体私達は、どうやったら安心安全な野菜を食べることができるのでしょうか?

本当に安心安全な野菜を食べたいなら、家庭菜園をやり、その上でどうしてもまかなえないものをオーガニック農家から購入するというのもありでは?

そんなふうに感じていた中、地方に行くと、耕作放棄地でなくても家庭菜園つきの空き家がゴロゴロしており、そこで自分たちの食べる分くらいの野菜は余裕で作れるし、実際そうしている家庭が多いです。

耕作放棄地の有効活用をしようとしたり新規就農をしようとすると、どうしても色々な制約があってできなかったり時間がかかります。本当に農家になる!と決意した人以外は、まずは余っている土地を使わせてもらって農作物を栽培してみる、というのがいいように思います。

ちなみに、今の私はこんな風なオーガニックライフを送っています。

野菜の自給とオーガニックのプロ農家さんからのお取り寄せの2段構えです。

基本的な野菜は家庭菜園で可能な限りオーガニックに育てて自給する

私の義父は小学校の校長を退職した後、ずっと畑を日課にしています。にんじん、じゃがいも、玉ねぎ、きゅうり、なす、白菜、キャベツ、小松菜、ほうれん草、いんげん豆、かぼちゃ、里芋あたりの野菜はほぼ自給しています。

農薬類・化学肥料類はほぼ無使用ですので、完璧ではないながらもオーガニック野菜と言っていいでしょう。

また、柿、梅、柚子、たけのこ、山椒は自生していますのでそれを採って食べます。ハーブは私が庭の一角でポタジエガーデン風に育てています。

お米や小麦粉、スペシャルな野菜などはオーガニック農家さんから取り寄せる

実は主人の実家では田んぼを所有しているのですが、別の農家さんに土地をお貸ししています。そこから格安でお米を購入させていただいています。農家さんは完全無農薬ではないですが減農薬でお米を栽培してくださっているので、当面はそちらからお米を購入する予定です。

小麦粉や、栽培していない野菜・スペシャルな野菜(我が家で言うとしいたけとか)は、なるべくオーガニックなものを取り寄せたり、探して購入するようにしています。

IFOAM(国際有機連盟)の提唱する「持続可能な社会づくり」を目指すオーガニック3.0では、家庭菜園をすすめている

このサイトを作るときに、IFOAM(国際有機連盟)のサイトを参考にさせていただいたのですが、IFOAMでは今、オーガニック3.0というのを提唱しています。

オーガニック3.0について

IFOAMが提唱するオーガニック3.0の具体的な中身は色々あるのですが、全体として「持続可能性」ということを前面に掲げていることが大きな進化・変化だと思います。

つまり、オーガニックといっても、短期的にしか続かない活動ではなく、あくまで次世代以降を見据えて行えるか活動をしていこう、ということが強く打ち出されています(もともとオーガニックの原理原則の中には、持続可能性も入っていますが)。

実は、その観点から言うと、海外の途上国などで単一の野菜を大規模栽培するモノカルチャー的なオーガニック農産物は、決して好ましいものではないと言われています。栽培するものにもよりますが、土地を痩せさせたり枯れさせたり、地域住民の農業活動を破壊したり侵害するなら、仮にオーガニックであってもそれは認められないということになります。

また、以前のコラムで、再生可能エネルギーとオーガニックは一直線につながる、という話を書きましたが、「持続可能」というテーマを強く意識すれば、化石燃料を使った発電で作るオーガニック製品、というのは矛盾以外の何物でも無く、真のオーガニックとは言えないということもわかりますよね。オーガニックシフトは必然的にエネルギーシフトも伴うのです。

これまでのIFOAMが推進してきたオーガニック活動は、主に有機認証の基準を作り、それを制定・普及させることでした。

しかし今後は、経済活動として農家として農業を行っているわけではない人たちをも巻き込んで、地域や社会を保全し、文化を伝承していくという「ライフスタイルそのものに関わるオーガニック」が国際的に推奨されるよということです。

この流れの中で私が面白いなと思ったのが、IFOAMは、中小規模の農家や家庭菜園でのオーガニックを応援するという姿勢をだしたことです。

これまでIFOAMが力を入れてきた有機認証は、マーケットを作る(有機農家を保護し経済的利益を得られるようにし、消費者が安心安全な野菜を手に入れられる)という意味では優れた制度でした。しかし同時に、この有機認証から取り残されてしまう農家や農業の形態もあるということが分かってきています。

そこで今後のIFOAMが提唱する「オーガニック」には、家庭菜園や中小規模の農家もちゃんと視野に入るという指針が打ち出されています。

家庭菜園で野菜を育てるのは楽ではないけど楽しい やってみてはじめて謙虚に農家さんの苦労を知りオーガニックを語れるようになる

私はまだまだ「お手伝い」レベルであって、完全にゼロからお野菜を育てているわけではありませんが、義父の家庭菜園のお手伝いをしながら感じるのは、家庭菜園で野菜を育てるのは楽ではないけど楽しいということです。

やっぱり、自分で植えたものが育ってきて、収穫できるって楽しいですよ。

そして、農業を実際にやってみてはじめて、命に対して、食べ物に対して、とても謙虚になれたということもあります。

ネットの情報を見て即席オーガニックマニアになって、この有機野菜はオーガニックとはいえないとか、有機JASとか書いてあるけど本当はオーガニックとはいえないとか、いくらでもケチをつけることが簡単にできます。

でも、実際に土に向き合うと、慣行栽培のメリットもわかるんですよね。それだけオーガニックは大変ですから。

自分で家庭菜園をやったことがなかった頃は、慣行栽培の農家さんを否定的に見たり、オーガニックもレベルがあるとか、色々通ぶっていましたが、やっぱり自分でやってみてはじめて、自分にできないことをしてくれている農家さんへの深い感謝の念がわきます。仮に慣行栽培のお野菜であってもこれまで私の体を養ってきてくれたことに畏敬の念を感じましたし、オーガニック農家さんのお野菜の貴重さをひしひし感じます。

国際的なオーガニックの流れでも大々的に家庭菜園が支持されるようになりましたし、オーガニックで家庭菜園のお野菜を育てるという選択肢もオーガニック好きなママさんたちには持ってほしいなと思います。市民農園などを利用してみるのもいいですし、知り合いで土地を持っている方に借りるのでもいいと思います。

安心安全な野菜を求める声をあげることも大切ですが、自分たちで作るという選択肢もある、そして今の日本では少し田舎に行けばそういう土地が余っているということを、もっと多くの人に知ってほしいなと思います。

 

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この記事を書いた著者

高橋ともえ
ceresmomを主宰する管理人・高橋ともえです。学生時代からドイツ語圏と深いかかわりを持ち、オーガニックコスメと出会い、オーガニックコスメのサイトなどの情報発信を行う。2014年「四気質の治療学」の翻訳出版。2015年第一子を妊娠出産。JOCA(日本オーガニックコスメ協会)認定オーガニックコスメアドバイザー。私生活では、江戸時代から続く近江商人の末裔の婚家の築100年の滋賀県の古民家を拠点に、お灸やハーブ、薬草やジビエなど田舎暮らしを楽しむ生活をしている。詳細なプロフィールはこちらから。

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