
このウェブマガジン・セレスマムの名前は、セレス(ceres)という女神の名前からいただいています。セレスはシチリア島の大地母神とされる女神で、天文学で言うと小惑星の名前にもなっています。
セレスという女神は、豊穣の女神であり、穀物を実らせ、この地上に植物の豊かさを与えるという役割を持つ女神です。寛大で優しい母のイメージや、オーガニックでナチュラルな活動団体などに使われることが多い名前でもあります。
セレスマムという名前をつけるときに、オーガニック・自然派のママ・プレママのためのウェブマガジンということで、穀物が象徴の母なる神ということでセレスはぴったりでした。日本ではまだそれほど使っている人がいない名称でもありましたのでちょうどよかったというのもあります。
ただ、その理由は表向きです。
実は、セレスの神話をより深く探っていったときに、どうしてもこの女神の名前をお借りしたいと思い、使わせていただいています。ただ、この裏の理由というか、一段深いレベルの理由がありますので、ここにひっそり書き記しておくことにします。ご興味のある方は読んでいただけましたら幸いです。
セレスは、またの名をデメテルと言います。ギリシア・ローマの神々は名前こそ違いますが同じ神話を共有しているのですが、このデメテルの神話を紐解いていくと、とても興味深い象徴が出てきます。
豊穣の女神デメテルには、ゼウスとの間にもうけたペルセフォネという美しい娘がおりました。
ある日ペルセフォネが花摘みをしていると、突然大地が裂けて冥界の王ハデスが馬車に乗って現れ、泣き叫ぶペルセフォネを連れ去りました。
いなくなった娘を探し地上をさまよい続けたデメテルのせいで、大地に撒かれた種を隠してその芽を出させず、このままでは地上の生き物たちは滅びてしまうという危機がやってきます。
困ったゼウスはハデスを説得しペルセフォネをデメテルの元へと帰すことにしました。
ハデスは、ペルセフォネに向かいすぐさま母親のもとへ帰すことにしましたが、喜ぶペルセフォネにそっとザクロの実を勧めたのです。
やがてついにデメテルはペルセフォネと再会することができました。しかし、ペルセフォネは冥界の食べ物であるザクロの実を食べてしまったので、1年のうちの3分の1は冥府で暮らさねばならず、残りの3分の2だけ地上に留まることになりました。
このため、ペルセフォネが冥府で過ごす間は、デメテルが嘆き悲しむため地上の生命が枯れて冬となり、ペルセフォネが母のもとへ戻るとその喜びのため地上に芽吹きの春がやってくるようになったのです。
参考サイト:デメテルとペルセフォネ(ギリシア神話)
セレス(デメテル)は、単純な豊かさの女神ではなく、死と悲しみを知っている母であるというのがポイントです。
そして、ペルセフォネをさらったハデス=冥王=プルート=プルトニウムであると考えると、興味深い象徴が浮かび上がってくるように思います。
2017年になってもまだ原発事故が収束していないポスト3.11時代の日本で妊娠・出産・子育てを経験する母たち、心のどこかで大切なものが汚されてしまったという深い部分で悲しみや嘆きを抱えつつ、それでもこの日本で生きると決めた母たちは、まさにセレスだなと思うのです。
いずれまたコラムを書きたいと思いますが、3.11をきっかけに復刊された児童書・「あしたは晴れた空の下で-ぼくたちのチェルノブイリ」という広島出身の中澤晶子さんの著作で、チェルノブイリ事故があったときの西欧(ドイツ)で妊婦さんや女性たちがどれだけ恐怖や悲しみや怒りを感じて過ごしていたのかという状況が詳しく描写されていて、びっくりするくらい3.11の後の日本の状況と似ています。
「あしたは晴れた空の下で-ぼくたちのチェルノブイリ」中澤晶子
ヨーロッパで特に大きくオーガニックが普及するきっかけになったのがチェルノブイリの原発事故だと言われていますが、ポスト3.11の現代日本に生きるママたちが、この痛みや悲しみの中から知恵と良識を持って日常生活でオーガニックを選択していくことで社会全体が変化していくことを願っています。
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